リスキリングの問題点とは?上手くいかない理由と対応策を解説

リスキリングの問題点愛キャッチ

「リスキリング」というワードが世間に広がってきました。管理職の方々も経営者から「我が社もリスキリングに取り組まねばならない」と言われ、対応していくようにオーダーがあったかもしれません。

でも、「リスキリングってなんだろう?」「いったい何をやれば良いんだろう?」「業者に丸投げでうまくいくものなのか?」と疑問や不安を抱えていらっしゃる方も多いと思われます。

本記事では、ブームに流されて急かされるように取り組みをスタートさせ、後で「失敗した」とならないように問題点と対応策について解説していきます。

これから、リスキリングに取り組んでいきたい経営者の方や管理職の方は、ぜひ、参考にしてください。

目次

リスキリングの問題点と対応策(従業員サイド)

リスキリングの問題点

リスキリングは「知識を学べ!」「スキルを身につけろ!」という号令をかけて学習ツールやシステムを導入するだけではうまくいきません。失敗するポイントをあらかじめ知っておいて、対応策を準備しておくことが重要です。

ここでは、「従業員サイド」での問題点をピックアップし、それぞれへの対応策を紹介していきます。

目的意識

「なぜ、リスキリングに取り組むのか」という目的意識が従業員に落とし込まれていなければうまくいかないものです。

従業員が「上司が言うから取り組まざるを得ない」という意識状態では、身につくものも身につきません。

ここで、重要となってくるアプローチが「コーチング」です。コーチングの流派によってさまざまな手法がありますが、コーチングをざっくりと説明すると「ゴール設定をサポートし、ゴールに導いていく手助けをする」という手法です。

従業員一人ひとりに「目的意識」を持ってもらうこと。その目的を達成するための働きかけを定期的に行うことが重要なのです。

ただやるだけでは、成果につながるリスキリングはできません。

学習スタイルにマッチしない

人はそれぞれ得意な学習スタイルがあります。例えば、NLPという心理学においてもコミュニケーションの対象者の得意な感覚を見極めてアプローチすることが重要だと言われています。

もう少し具体的に書くと「V=visual(視覚)」「A=audio(聴覚)」「K=Kinestic(身体感覚)」という3つのタイプに分類するのです。

これをリスキリングのアプローチに落とし込むと、V型の人には図解マニュアルや動画教材、A型の人には音声教材、K型の人には体験型の学びを提供するなどの方法が考えられます。

社内で一斉に同じ学習システムを導入するにしても、タイプ別の「効果的な学び方」をレクチャーしてあげると良いでしょう。

V型の人には学んだことをマインドマップに落とし込んでもらう。A型の人にはテキストや要約文を音読して録音してもらう。K型の人はテキストの写本や学んだ内容をプレゼンしてもらう。などさまざまなアプローチが考えられます。

私は「効率的な学び方」の研究と実践を長年続けてきましたので、最適な学習方法をお伝えできるでしょう。

学習が習慣化できない

リスキリングに取り組む際、大きな壁となるのが「学習の習慣化」です。これまでにも、学習プログラムを導入したが、社員の学習が続かなかったとお悩みの経営者の方も多くいらっしゃると思います。

実は、「習慣」はあるポイントを抑えないことには形成するのが難しいものなのです。

習慣化のポイントはいくつかあるのですが、ここでは、最も効果的なものを一つだけ紹介します。

・毎日同じ時間に実行する

これが最も大切です。私もライティングの訓練を1000日以上継続して取り組んだことがあります。その時は、いつもより1時間早起きして、その1時間をライティングの訓練に当てていました。

組織的にリスキリングに取り組む際は、セクションごとに毎日15分など決まった時間をリスキリングに当てる方法が考えられます。業務の一環として「学び」や「スキルを身に着ける学習」を位置付けるのも良い方法です。

従業員の自主性に任せる場合は「習慣化のポイント」をリスキリングスタート前にしっかりと教え込んでおく必要があるでしょう。

実務に落とし込めない

リスキリングに取り組んでも実務に落とし込めなければ具体的な成果につながりません。取り組みをスタートする前に、学習カリキュラムの全体像を管理者が把握し、学習ステップごとに実務への落とし込みを考えたワークを取り入れると良いでしょう。

あらかじめ、自社の課題をリストアップしておき、学習カリキュラムの中で課題解決に使えそうな知識やノウハウが出てきた際に、ケーススタディとして取り組んでみると良いでしょう。

リスキリングの問題点と対応策(管理者サイド)

リスキリングの問題点(管理者サイド)

これからリスキリングを管理者として進めなければならない立場になる管理職の方が増えていくと思われます。ここでは、その際にどんな問題点に直面するか、そして、それらの問題点への対応策をご紹介します。

何をどう進めたら成果が出るか分からない

経営者から「リスキリングに取り組んでほしい」というざっくりとしたオーダーを受けて、進めざるを得ない立場になる方もいらっしゃることでしょう。

ざっくりとしたまま、フワッと進めては、当然のことながらリスキリングは成功しません。

初期設計の段階で5w3hをしっかりと抑えておくことが大切です。5w3hの各項目は下記の通りです。

項目具体的な質問例
When(いつ)リスキリリングの開始時期はいつで、終了時期はいつまでを考えているか
Where(どこで)社内研修をベースに考えるか、社外に学びにいく形式をベースに考えるか
Who(誰が)・リスキリングの対象者は誰になるか・管理者、責任者は誰がやるか
Why(なぜ)なぜ(何を目的として」リスキリングに取り組むのか
What(何を)何が解決すべき課題なのか
How(どのように)どんな手法を使ってリスキリングを進めるか(外部講師の招聘、学習ツール・システムの導入、社外スクールへの通学 など)
How many(どのくらい)どのくらいの頻度でどのくらいの時間取り組むか(毎日◯◯分、毎週◯◯時間、毎月◯◯時間)など
How much(いくら)予算はどのくらいかけられるか

リスキリングのみならず、新たな取り組みをスタートさせる際には5w3hのフレームワークは非常に便利なので、ぜひ、活用してください。

従業員のリスキリングに対するモチベーションを高められない

これまで、さまざまな企業の経営者の方々や管理職の方々とお話しする機会がありましたが、従業員のモチベーションを高める術を身につけていらっしゃる方はそう多くないです。

モチベーションを高める手法はたくさん存在しますが、ここでは、成果に繋がりやすい2つの方法を紹介します。

評価制度への組み込み

リスキリングの成功に関して最も重要なのは「内発的動機付け」ですが、「学びの文化」が定着した企業ではない場合、取り組み初期の段階でそれだけに頼ってしまうのは危険です。

一部の社員だけが積極的に取り組み、他の社員は置いてけぼりになってしまう可能性が高いです。

そこで、ご提案したいのが「評価制度への組み込み」です。人事評価の中に「学びへの積極性」という項目を入れて、一定の点数を獲得でき、給与や賞与に反映する仕組みにします。また、それをあらかじめ従業員に説明しておくことも大切です。

また、該当する学習プログラムを修了することを昇進の条件に組み込む手法も有効です。具体的には「マーケティング部門の責任者になるためにはデジタルマーケティングのプログラムを終了する必要がある」「人事部門の責任者になるためには採用戦略やHRMのプログラムを終了する必要がある」などの条件を設けることです。

責任者、管理者がコーチングを学ぶ

前述しましたが、従業員に「目的意識」を持ってもらわなければモチベーションを高めることはできません。

ですから、「目的設定」と「目的達成のサポート」を行うコーチングのスキルを責任者や管理者が身に着ける必要があるのです。

リスキリングに取り組む過程で責任者や管理者がコーチングを身につければ、従業員一人ひとりのモチベーションを高め、生産性をあげ、社内にさまざまな波及効果が発生していくことになります。

スキルを身につけたら転職してしまう不安がある

確かに、従業員が新たなスキルの獲得やスキルの高度化に成功したら、より良い条件・待遇を求めて転職してしまう可能性はあるでしょう。

しかし、100人が100人転職してしまうわけではありません。ここで、大事になってくるのが「転職をさせない仕組みを作る」という思考にならないことです。

リスキリング後、転職を希望する社員が増えたら「チャンス」だと思ってください。

円満な関係を構築して転職してもらうことが、新たな企業とパートナーシップを築くきっかけになると捉えると良いでしょう。

それでも「せっかくコストをかけて育てたのに転職してほしくない」という場合は、「転職したくないくらい良い会社を作る」という意識に切り替えていきましょう。

他の会社と比較して自社が魅力的なら転職を希望する人が増えることはありません。これを機会に社内制度の見直しに着手するという発想が大切です。

リソースが足りない(予算・権限・時間)

何か新しい施策を始める時、よく組織で課題として上がってくるのが「予算がない」「権限がない」「時間がない」の3つだと思います。ここでは、それら3つについて掘り下げて考え、対応策を紹介していきます。

予算が足りない

何か目の前に問題が生じた時には、問題解決の基本的なフレームワークであるWhere→Why→Howを活用して思考を整理していくと良いです。

Where(どこが問題か):

リスキリングにかける予算が足りない

Why(なぜその問題が発生しているか):

1.社長が予算を増やしてくれない

2.会社の経営上予算が捻出できない

How(どうやって解決するか):

1.社長と交渉する(リスキリングの必要性を理解し、何に取り組むべきか明確に説明する)

2.現状の固定費と変動費を見直してコストカットを行う

社長(もしくは、予算決定権を持つ人物)がリスキリングの必要性を理解してくれないという場合は、5w3hを明確に整理して、どれくらいの予算が必要かを確定し、交渉すべきでしょう。

従業員のリスキリングに予算をかけると会社が傾いてしまうという状況では、確かに難しいかもしれません。ですが、その場合は、現状の経営の見直しが必要だと思われます。

株式会社リスキリング・マーケティングでは実務経験豊富な公認会計士とパートナーを組んでおりますので、経営相談に関してもぜひ一度、お声がけください。

権限がない

「権限がない」という場合も、問題解決の基本的なフレームワークであるWhere→Why→Howを使って情報を整理してみましょう。

Where(どこが問題なのか):
1.リスキリングプロジェクトを企画する権限がない
2.予算を決定する権限がない
3.従業員に指導する権限 など

Why(なぜその問題が発生しているか):
1.上司が権限を持っている。もしくは、意思決定権者が不明確。
2.上司が権限を持っている。もしくは、意思決定プロセスが不明確。
3.上司が権限を持っている。もしくは、権限ではなく能力の問題。

How(どうやってその問題を解決するか):
1.上司を説得する。もしくは、責任者と権限の範囲を決める。
2.上司を説得する。もしくは、予算化の意思決定プロセスを明確にする。
3.上司を説得する。もしくは、自己の指導能力を高める。

そして、「権限がない」と感じる場合であっても、権限があれば問題が解決するのか、それとも自身の能力向上やコミュニケーションによって解決できるのかを掘り下げて考えると良いでしょう。

その結果、「権限が必要」だという結論に至った場合は、情報を整理し、組織的な議論の上で権限を獲得する努力をしてみましょう。

自身の能力向上で対応できる場合は、自己を磨く努力をし、コミュニケーションで解決できる場合はそちらに自己のリソースを割くようにすると良いと思います。

時間がない

「時間がない」という場合も問題解決の基本的なフレームワークであるWhere→Why→Howを活用して情報を整理してみましょう。

Where(どこが問題なのか):
リスキリングプロジェクトに割ける時間がない

Why(なぜその問題が発生しているのか):
他の業務が忙しく時間が確保できない

How(どうやってその問題を解決するか):
・業務の優先順位を見直す
・業務効率化を図り時間を捻出する
・外注する

業務に割く時間がないという場合は、BPRかBPOを検討すると良いでしょう。

BPRとは、ビジネスプロセスリエンジニアリングの頭文字をとった言葉です。業務目的を明確にし、既存の仕組みを再検討し、職務内容や業務フロー、業務に関連するシステムを再構築する取り組みをさします。

BPOとは、ビジネスプロセスアウトソーシングの頭文字をとった言葉です。業務プロセスの一部分に関して、企画・設計・実施というプロセスを専門のスキル・知見を持った業者に外部委託することをさします。

BPRやBPOは組織の生産性向上に役立つため、リスキリングの実施いかんに関わらず、定期的に組織全体の業務プロセスの見直しを図り、積極的に取り組みを進めていくと良いでしょう。

リスキリングの問題点と対応策(日本の企業文化)

社外学習や自己啓発に関する取り組み状況
引用:パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)

海外と比較して日本にはリスキリングへの取り組みが遅れていると言われています。パーソナル総合研究所が2022年に発表した調査結果では、日本人の52.6%は社外学習・自己啓発に関して「何も行っていない」と答えています。2位のオーストラリアが28.6%だということを見ても、日本人は圧倒的に自己学習・自己啓発に取り組んでいないことが分かります。

リスキリングの取り組みが広がっていない

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2021年に発表した調査には下記の内容が記載されていました。

・リスキリングを実施している米国企業は82.1%、日本企業は33%

・リスキリングの実施も導入も検討していない日本企業は46.9% 

参考:独立行政法人情報処理推進機構/DX白書2021 第3部 デジタル時代の人材

日本ではリスキリングの必要性が、まだまだ認識されていないのが現状です。

「リスキリング」という言葉がテレビや新聞で取り上げられる機会が増えてはきましたが、その必要性が広く社会に認識されるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。

我々もリスキリングに関する意識啓発の一助となるように、今後も情報発信に努めて参ります。

DX化を外部委託してしまい知識やノウハウが社内にない

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)化という言葉がブームになっています。経産省が打ち出した「DX推進ガイドライン」では、下記のようにDXが定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

一言でまとめるとデータとデジタル技術を活用した組織変革・ビジネスモデルの変革がDXなのです。この記事を読んでいただいているあなたの企業、もしくはあなたが所属している企業は、DXを推進していますか。そして、その結果、組織変革・ビジネスモデルに変革は起こったでしょうか。

DXとは、既存の業務プロセスの一部をデジタル化して効率化するだけではないのです。本来は、組織の思考回路のインフラをアップデートしてしまおうという取り組みなのです。

日本企業の多くは「DX化=デジタルシステムの導入」という側面で捉えてしまい、外部業者にほとんど丸投げで進めてしまったところも多いのではないでしょうか。

デジタルシステムの使い方は理解できたけど、なぜこれを使うのか、これを使うことによってどんな課題が解決され、どんな目的が達成されるのかという深い部分まで従業員に落とし込めていない可能性があります。

そのような背景から「リスキリング」と聞いてもどんなデジタルスキルを従業員に身につけさせていくべきかのかを考えるためのベースができていない企業も多く存在すると思われます。

OJTの意識が強すぎてデジタル人材の育成が進んでいない

日本企業は長らく「終身雇用」が前提でした。年功序列で役職や給料が決まり、定型化された業務プロセスの中で行われる仕事が多く、それをOJTで先輩から後輩へ伝えていくという文化が長く続いてきたのです。

しかし、現代社会は非常に変化の早い時代です。今、職場内にある定型化された業務を身につけてこなしていくだけでは、企業の生き残りが難しい時代だと言えます。企業内でのキャリアプランを従業員に示して、そのキャリアのために必要なスキルを身につけさせていくことももちろん大切です。

一方で、どう変化していくか分からない状況の中、変化に適応するためのスキルを従業員に身につけさせていくという考え方も重要です。

株式会社リスキリング・マーケティングでは、さまざまな変化へ対応する思考回路を身につけるためにも、組織のインフラスキルとしてまずは、デジタルマーケティングを学ぶことを推奨しています。

まとめ

「リスキリング」というワードをTVやインターネット上で目にする機会が多くなった昨今。漠然と「我が社も取り組まなければ」という想いを抱えていらっしゃる方も多いと思います。

恐る恐る始めるのではなく、まずは、リスキリングの取り組みによって得たい成果と解決したい問題を明確化することが重要です。

また、本記事で紹介した従業員サイドの問題、管理者サイドの問題、日本の企業文化の問題を念頭に置いた上で、5w3hを明確にしてプロジェクトを計画してください。

変化の激しい時代。変化に対応できる企業・組織・従業員を育てていくためにもリスキリングの取り組みは必須だと言えます。

「何をどう進めていったら良いか分からない」という方は、ぜひ一度、弊社にご相談ください。丁寧にヒアリングをして、貴社のニーズや予算に合わせたプランをご提案いたします。

▶︎リスキリングに関するサービス内容はこちら

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